幼少の頃から自身の考えや感情を他人にうまく伝えることが出来なかった私は、常に内向的で、自分の存在価値や意味についてばかり考えてきました。一見「静」の中に存在するように大人しく見えた私の中には、マグマのように奥底から湧き上がる、消したくても消せない激しい「動」がありました。これをコントロールするのは容易ではなく、突如前触れもなく狂おしいほどの「感情」や「衝動」が私の体を駆け巡り支配します。私はこの正体を知りたくて自己を見つめます。それは愛なのか性なのか欲望なのか怒りなのか苦悩なのか悲哀なのか。半世紀以上生きて尚答えは出ません。

大きな肉の塊である私の中には、他人と同じように骨があって内臓があり、赤い血が流れ、心臓が鼓動を打ちます。顔には目がついていて、世界を見つめます。愛おしいものの感触を確かめて、においをかいで、味わって生きています。
世界と私との関係を観察したり、人間の内なる秘密や心の叫びに耳を澄ませること、そして私は女として存在していることに注意を払いながら、そういったものを「私の衝動」とともに表現できたらと思う所存です。

千景

1973年生まれ。
武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。
景アトリエ主宰。

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